2023年2月

『白梅の あと紅梅の 深空あり』
※出典:飯田龍太『句集 山の木(第六句集)』立風書房

二月のまだツンとした冷たい空気の中に綺麗な白梅が咲き、その後に少し時間が経つにつれ紅梅が咲いてくる。青く澄み渡った空に白と紅の梅が鮮やかに咲いている。
白梅から紅梅へと花はうつろいゆくけれども常に頭上の青い空がその花を包み込む。青く澄み渡る空に白紅の梅の花が調和し合う色鮮やかな情景が浮かびます。
福岡でサラリーマンとして働いていた時の事です。朝早くに仕事に向かい夜遅くに帰ってくる生活。そんな仕事ばかりの毎日で心身共に疲弊しきっていました。
久々の休みを取り、地元である熊本に帰り近くを散歩していた時の事、梅の花の香りにつられふと上を見上げると、そこには咲き誇った紅梅と青く澄んだ空が広がっていました。
仕事に追われ空なんて見る余裕などなかった事にハッと気付かされました。考えてみると子供の時はよく見上げていた空も、歳を重ねるにつれ目の前の物事をこなすうちにいつしか見る事さえしなくなっている。
昔と変わらない空に私はなんとも言えない安心を感じました。白梅から紅梅に咲きうつろいゆく様に、私たちが生きている世界も常に移り変わりゆきます。心が追いつかない様な変化もある世界でもあります。
「変わりゆく私。変わりゆく世界に生きているからこそ変わらないものが安心を与える」のでしょう。
ゆとりなく変わり続け喜怒哀楽を繰り返す私たちを決して変わる事なく常に優しく南無阿弥陀仏と包み込んで下さる仏がいらっしゃいます。その仏を阿弥陀仏と申します。
合掌