平成23年 秋季彼岸会「世のなか安穏なれ」
この言葉は、親鸞聖人が、関東のお弟子に出されたお手紙の一節です。親鸞聖人750回大遠忌法要のスローガンとさせていただきました。聖人から私たちへの深い願いのメッセージとして、私たちは、そのおこころをしっかり拝受致したいものです。
今の世のなかは、環境・経済・家庭などで、さまざま問題が起こり、自死される方が年間約3万という構造的社会状況で、人びとの不安と苦悩は深まっております。不安や苦悩のもとをたずねますと、日本人全般にわたって、心のあたたかさ・ぬくもりが薄くなっているからではないでしょうか。人と人とのつきあいが面倒くさく、自己中心的な考えで、他の人のことに思いが及ばない。いわゆる絶縁志向が孤立化をうみ、自らを苦しめている世のなかではないかと思われます。
阿弥陀如来の前に静かに座り、合掌し、ゆったりとお念仏申しましょう。ゆっくりと頭をたれてお参りさせていただきましょう。そして、如来のまことの智慧とあたたかい慈悲の声を心で聞いてみましょう。
阿弥陀如来の智慧と慈悲にあわせていただきますと、自分が生かされてあることに気づき「ありがとうございます」と、すべてにお礼が申せましょう。自分のいのちはもとより沢山のものに、すでに恵まれてあることに目覚め、「もったいないことです」と感謝の念が起こりましょう。
人間はひとりでは、生きてはいけない不思議なるご縁に思い到るとき「お互いさまですね」とあたたかい心で、ひとさまに接せましょう。
目には見えませんが仏の慈愛を感ずるとき「お蔭さまです」と申せましょう。
自分ひとりだけの仏法ではなく、多くの人に聖人の願いを伝えて、世のなか全体が安穏でありたいものです。
大谷本廟
『親鸞聖人御消息』第25通―「わが身の往生 一定とおぼしめさんひとは、仏のご恩をおぼしめさんに、ご報恩のために、御念仏こころにいれて申して、世のなか安穏なれ、仏法ひろまれとおぼしめすべしとぞ、おぼえ候う。」